斜陽に立つ
古川薫 著

斜陽に立つ

  • 作者: 古川 薫
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2008/05/29
  • メディア: 単行本

今年に2月まで、一年以上にわたって毎日新聞日曜版に
連載されていた小説だ。 今年の5月に単行本化されたことは
知っていたけれども、落ち着いて読みたかった。 やっと読了した。

乃木は愚将に非ず。 否定も肯定も出来ない。
ただ、私は歴史家でも作家でもない。 「過去に対する現代の優位」
があるから、この本を新聞連載時も単行本としても読むことが出来た。
再読しようと考えた理由は、結びの一文の
「自敬に徹したこの最後のサムライにとって、世上の毀誉褒貶は
無縁のざわめきでしかなかった。」
だった。 単行本を手にするまで、いろいろと自分なりに考えて見た。
乃木希典と児玉源太郎。 そして、ここでは語られていない東郷平八郎
のこと。 考えれば考えるほど、結びの一文に回帰してしまう無限ループに
陥った。 神格化され、いいようにその精神論が幾度と無くよみがえる
乃木希典、 昭和時代まで生きつづけ、艦隊派にもちあげられ、半ば
生き神様と化した東郷平八郎。 この後、類する人種が思い浮かばない
児玉源太郎。 でも、本人達にとっては、「世上の毀誉褒貶は無縁」
なのであろうと思う。 正に無限ループだ。